最近、ディスプレイのないカメラのことをぼーっと考えてるんだ。ディスプレイのないボディだけのカメラというと、「レンズスタイルカメラ」として世に出たQX-1とか、OLYMPUS AIRがあるよね。もう5〜6年前の話。ただ、あまりにも奇抜なせいか、使っている人を見たことがないし、後継機種も出てこない。しかし、「ちょっと待てよ」と。
ディスプレイのないカメラって、結構、日常的に使ってるやん。ほかでもない、ZWOとかQHYの天体専用のカメラがあるじゃない? なのに、どうして、レンズスタイルカメラを天体用途に使おうとしてこなかったんだろう。もちろんね、冷却ができないとか、単純に存在を忘れてたっていう理由はあると思うんだけど、ディスプレイのないカメラを天体用に見直してみてもいいんじゃないかと思った。
私がそう思い始めたきっかけは、INDIEGOGOで「レンズスタイルカメラ」のキャンペーンを見つけたことだったんだ。Alice Cameraって言うんだ。ロンドンの「フォトグラム(Photogram)」というスタートアップが出資を募ってる(実際はプレオーダー)。
Alice Cameraは、「一眼レフとかミラーレスって優れた光学系を持つのに、スマホに比べて時代遅れだし、しかも、どうしてUIがあんなに使いにくいんだ」という、そんな課題を解決するためのプロジェクト。
Alice Cameraも背中にディスプレイが付いてないもんで、背中にスマホを挟んでディスプレイ代わりにする。AndoridをベースにしてディスプレイをカメラにくっつけたZX1もあったけど、お値段は50万円とかだった。普及しやすいお値段にしたかったので、分離させたということらしい。
「レンズスタイルカメラ」が定着しなかったのは、誰の目から見ても明らかなように、ボディとディスプレイを分離したことで、使い勝手が今ひとつ、ふたつだったこと。QX-1は、スマホと接続するのに10秒はかかって、撮りたい写真がすぐ撮れないっていうのが致命的だった。でもさ、天体写真を撮るのって、瞬間を狙うシャッターチャンスみたいなのはないわけで、撮影する際のコントロールはスマホで十分なんじゃない?って思ったわけ。
QX-1やAliceを鏡筒バンドで固定すれば、ASIカメラと同じように使える。QX-1はセンサーサイズがAPS-Cでお値段は中古で3万円といったところ。EOSのようにボディーが大きくないのでコンパクトに使いたい分にはいいんじゃないかな(APTとかステラショットに接続はできないけど)と妄想してるよ。
話は戻って、Alice Cameraは、GH5SやBlack Magic Pocketに使われているのと同じマイクロフォーサーズ(MFT)の1,070万画素クアッドベイヤー・センサーを搭載するらしい。だとしたら、それはおそらく、みんな大好きIMX294だ(GH5SはIMX299という話もある)。MFTを採用したのは、(比較的)オープンなシステムだという理由。ライセンスは無料だったと言ってる。IMX294は、ASI294として天文ギョーカイでは結構、いい評価がされているよね。
ソニーの「レンズスタイルカメラ」と見た目が違うのは、本体にグリップがついていることだな。スマホに接続しなくてもシャッターが切れるのはQX-1と同じ。大きく違うのは、コンピュテーショナルフォトグラフィーを取り入れていること。コンピュテーショナルフォトグラフィーというのは、センサー上に結像した画像を記録するのではなくて、露光やフォーカスとかそのあたりのデータをAIで加工したうえで記録する。
コンピュテーショナルフォトグラフィーという言葉は聞き慣れないけれど、最近のiPhoneやGalaxyといったスマホには搭載されていて、暗いところでもよく写るとか、背景をぼかすとか、すでに恩恵を受けている機能なんだ。DSLRなどの画像エンジンと違うのは、おそらく何枚もの画像を組み合わせた機械学習による処理をかませて最適な絵を得ることだと思う。そのためにAliceには機械学習の推論と学習の演算を担当するGoolge謹製のTPU(Tensor Processing Unit)も搭載するらしい。
コンピュテーショナルフォトグラフィーに関する話は、Alice Cameraの核になる部分。出力フォーマットは選べる(iPhoneのPro RAWみたいなの?)みたいとはいえ、コンピュテーショナルフォトグラフィーは、画像処理エンジンさえ通さないTrue RAWを求める天文ギョーカイのユーザーさんの間では好き嫌いが分かれそう。
そうなんだが、フォトグラムのチームは、そこにカメラの未来を見ている。「スマホの方がUIやAIが優れてるのに、ミラーレスや一眼レフがいまのままっておかしくない?」って感じ。加えてバッテリーは取り外しができないみたい。環境問題を考えてそうしたと言ってる。交換方法は考え中らしい。
話は2つ。奇抜な形をしたQX-1やAlice Cameraといった「レンズスタイルカメラ」は陸戦用では使いにくそうだけれど、天体用として使うには、ボディの形は問題にならないので、興味が出てきたという点と、IMX294搭載でコンピュテーショナルフォトグラフィーを取り入れたAlice Cameraは、AIの力を借りて天体写真をよりきれいに撮れるのか興味が出てきたという点。後者に関しては、Google Pixel でそこそこキレイな星景が撮れているので、ある意味実績も出てきたのかもね。
Alice Cameraに興味のある方は、公式とINDIEGOGOのページにどうぞ。89,853円から。非冷却のASI294とほぼ同じお値段なのだ。出資募集は3月11日までだと思う(違ってたらごめんなさい)。Alice CameraのCEOは「カメラを買うだけじゃない、未来への献身を買ってほしい」と言ってる(察し?)。公式は下のリンクから。右上の[PRE-ORDER]のボタンを押したら、出資ページに行けるよ。
この記事へのコメント
難しい横文字カタカナがたくさんで、お勉強しなきゃと(ちょっとだけ)思いました。
でもって、スマホをUIとして利用するってのは、ホント色々と凄いっすよね。
AZ-GTiもそうですよね。
ちょっと違うけど、スマホを挟み込んで3Dで英知な動画を鑑賞できちゃうゴーグルとか素晴らし過ぎる発明ですよねぇ。
… 何言ってんだ俺…
けむけむさん、誰かが言ってたんですが、聞き慣れないカタカナが世の中に飛び交っているときは、どこかで儲け話が進んでいるんですって。
おっしゃるとおり、ゴーグルはよく考えましたねぇ。十数万円の品が数千円ですよ。スマホを使うのと使わないのでこの価格差! 英知ですよねぇ。
おいらも大好きIMX294。^^メシガススムススム
なかなか面白いカメラだね。
ただ、センサーがIMX294でなかったら、スマホで撮ればいいんじゃない?という考えもよぎったよ。
あっ、マウントがMFTでレンズが選べるというのも、スマホとは違うなぁ。
”コンピュテーショナルフォトグラフィー”をどのように考えるかが、このカメラの価値のような気がするな。
おいらの50年後の未来はどこかに売ってるでしょうか?^^;イランケドネ
>スマホで撮ればいいんじゃない?
私もそう思います(笑) プロはコンピュテーショナルフォトグラフィーを求めないと思うので、一般のユーザーを取り込めるかどうかですよねぇ。これからのデジタルカメラ市場は、今後こっちの方向に進んでいくと思うので、5年のうちにヨドバシとかビックカメラに売ってると思いますよ。日本のメーカーで一番近いのはソニーかなぁ。