あぷらなーとさんのブログで、歴代のステライメージのパッケージやらスクショが掲載されていたので、昔のステライメージに興味をもったんだ。昔のことを知るのは面白いね。
初代の発売日は1997年のバレンタインデーだった。20周年に当たる2018年にステライメージ8がリリースされたんだが、発売日は初代と同じバレンタインデーだった。私は、今日まで気づかなかったけど、中の人の愛着が滲み出ている感じがしたよ。
以下、主にアストロアーツさんのアーカイブを漁って、ステライメージの歴史を調べてみた。
初代ステライメージのスクリーンショット
まずは初代のスクリーンショットをみて欲しいんだ。歴史的な価値があるので、アストロアーツさんから引用させてもらった。1997年ってことは、Windows 95で動いていたんだよね。そのころの解像度は、VGA(640×480)かSVGA(800×600)だよな。あぷらなーとさんが1998年当時に使ってらしたビットランのBJ30Cが30万画素だったらしいので、VGAでは縮小表示しなくても、ほぼ全面で表示できたわけだ。
リリース年表
SIシリーズの発売日を年表にまとめてみた。1997年に初めて世に出てから、2020年までに9つのパッケージが発売されている。2020年のVer9からダウンロード販売が始まったんだけれど、初代からVer2までのパッケージは、フロッピーディスクで供給されていたと言う話があった。
年月日 | イベント | 特徴 |
1997年2月14日 | ステライメージ発売 | 256階調の32ビット浮動小数演算 |
1998年5月15日 | ステライメージ2発売 | 「デジタル現像」を実装 |
1999年? | ステライメージ3発売 | 「画像復元」「スターシャープ」を実装 |
2003年4月7日 | ステライメージ4発売 | RAWの直接読み込みに対応 |
2005年3月25日 | ステライメージ5発売 | 「96ビットスーパーカラー処理」の実装 |
2008年4月30日 | ステライメージ6発売 | 「サムネイル表示」「ワークフロー」の実装 |
2011年9月30日 | ステライメージ6.5アップデータ公開 | マルチコアCPUと64bit OSのネイティブ対応 |
2013年3月5日 | ステライメージ7発売 | オートストレッチ、自動位置合わせを実装 |
2017年2月14日 | ステライメージ8発売 | 自動処理モードを実装 |
2020年12月21日 | ステライメージ9発売 | 処理の高速化。ダウンロード販売対応 |
ステライメージ1,2 (1997,1998)
銀塩からデジタルへと時代が移り変わりつつあった1997年、SBIGが発売したCCDカメラの普及に応えること、そして外国製ソフトではない日本人に馴染みやすいソフトとしてステライメージは誕生した。翌年には「ステライメージ2」が発売された。武藤工業が冷却CCDに参入した時期らしい。この辺りの話は、発売20年を記念するアストロアーツさんの記事「開発者が語る「ステライメージ」、20年の歩み」から拾って来たのだけれど、もっと詳しく書いていて欲しかったぞ。タイトルに「開発者が語る」とあるんだから、実名で語って欲しかったなぁ。星ナビには、記録されているんだろうか。気にはなるけど図書館に向かう気力はない。
ステライメージ3(1999?)
発売日に関する確たるソースが見つからなかったんだが、2000年に休刊した「スタークリック」というサイトで、Ver3の記事が扱われていたページのURLをみると、1999年なのかもしれない。記事には、サブピクセル(0.1pix単位)の調整や複数の画像のコンポジットや、ダーク・フラット補正の一括自動処理ができるようになったと書いてあった。
アストロアーツさんのアーカイブで見つけられる最も古いステライメージに関する記事は2001年11月1日で、ステライメージ3のアップデータ公開に関する内容だった。アップデータの「最大の特徴は、「ノンブルーミング回転合成法」に対応したことだ」とある。CMOSが中心になった今はあんまり想像できないけれど、当時はブルーミングに悩まされていたんだな。
ステライメージ4(2003)
当初、CCDカメラ用に開発されたステライメージは、2003年のVer.4でデジカメのRAWファイルの読み込みができるようになった。「スターエンハンス」「ネビュラスムース」などの新フィルターを搭載したんだそう。Ver4が発売されたのを機に、ネットオークションでVer3が頻繁に出品されていたらしい。
発売後に続くアップデータは、バグフィックスと対応デジカメの種類を増やすことに注力されていて、ニコンのD70、キヤノンの20Dなどがその対象になってた(アップデータの最後のリリースは、2005年3月31日)。
ニコンD1の発売が1999年。そこから急激に銀塩が廃れて、急速にデジタルに変わって行くので、そうした市場のニーズがあったんだろうな。冷却CCD向けだったステライメージがDSLRコンシャスになったという意味では、Ver4は一つの転換点なのかもしれないな。
ステライメージ5,6(2005,2008)
Ver5は、「96ビットスーパーカラー処理」エンジンを搭載、「現像なし」読み込みに対応したほか、デジタルビデオカメラやWebカメラなどから作成した動画ファイル読み込みにも対応とうたわれていた。ベイヤー配列のカラー合成に対応したのはこのVerからみたい。
何気に大事なのはVer6。フィーチャーされていた機能は、「サムネイル表示」、「ワークフロー機能」、「選択マスク機能」あたり。Ver5と同じくこれと言ってすごい新機能があるわけではないよね。でも、なんで大事なのかと言うと、この子がないと6.5にアップデートできなかったからなんだ。
ステライメージ6.5 (2011)
バージョンナンバーを見てもわかるように、メジャーアップデートと言う形をとっていないんだ。あぷらなーとさんの話をうかがっていると、Ver6.5は、コンポジットが速いと言うことは分かっていたんだけれど、それ以外にもVer7になっていてもおかしくないくらいの大きなアップデートだったみたいだよ。しかも無償だった。
一番大きな変更は、「マルチコアCPU対応」「64bit化」だった。「星ナビ」2011年11月号には、「2011年の現在、CPUは Core iシリーズが主流となり、平均的な仕様のPCはすべてマルチコアのCPUを搭載するようになった」と書いてあった。そんな時代だったね。
パフォーマンスについては自信があったみたいで「2000万画素を超えるRAWファイルを複数扱っても、ハードディスクへのスワップが発生しにくくなった」とか、SI6では、オンメモリ16Gで800万画素の画像が9枚しか処理できなかったのが、47枚にまで処理枚数が増えたことが紹介されていたよ。
リリースサイクル的には、前の製品から3年が立っているので、この時点でVer.7になっていてもおかしくなかったんだが、なぜそうしなかったかは謎。震災の影響とかあったのかな。
ステライメージ7,8 (2013,2017)
2016年に天体写真を始めたので、Ver7からは、私も使っている製品だ。Ver7の売りは「自動位置合わせ」と「オートストレッチ機能」、そして「黒ベースのユーザーインターフェース」(笑)。コンポジット時の自動位置合わせは、時間がかかるので、手動とバッチで基準点を打っているよ。黒とか色を売り物にしている時点で、盛り込む一般的な機能はすでに盛り込んでしまったんだろうな。
翌年に8が出るとは思ってなかったので、Ver7を買ったんだが、Ver8が出たのでやっぱり8を買った。一連の処理を自動化した自動処理モードが売りだった割には、制約も大きく、あんまり使わない機能だった。これがメジャーバージョンアップと言うのが信じられないんだが……。アストロアーツさんのバージョン管理ってどういう方針なのかわからないけれど、Ver7.5でよかったんじゃないかな。アップデータ対応だと、料金がいただけないからなのかしら? どっちにしても、ステライメージ発売20周年を祝うには地味すぎたと思うよ。
ステライメージ9 (2020)
このバージョンからダウンロード販売が始まった。光学ドライブを使ってるユーザーは確実に減っていると思う。インストールするために引っ張り出してくるのが面倒なのでこの販売方法に変わったのは大きいと思うよ(性能の話ではないけどね)。また、Ver9の最大の特徴は高速化、しかし、これってVer7になった時に落ちた速度を元に戻しただけとも言えるよね。むしろVer8をアップデータで対応した方がよかったんじゃないの?とも思う。
サポート終了
最後に、サポート終了の時期を掲載しておく。すでにステライメージ7のサポートは切れていたのか!
ステライメージ 7(2019年2月6日)
ステライメージ 6(2015年3月5日)
ステライメージ 5(2010年5月31日)
ステライメージ 4(2007年3月25日)
まとまらないまとめ
年表をみてわかる通り、ここ最近のステライメージの製品サイクルは3、4年と言ったところ。大幅な改変があってもマイナーアップデートにしたり(6→6.5)、あまりコンセプトに大きな変化なのにメジャーアップデートにしちゃったりして、規則性がないように見えるな(個人の印象です)。
バージョンアップの追加された一つ一つの機能は地味だけれど、20年もかけて進化してきただけに、振り返って見ると案外、機能の数はてんこ盛り。まだ完全ではないにしろ、盛り込める機能は一通り揃ったとも言えるし、まだまだ盛り込める機能があるとも言える位置にあるような気もする。
いずれにせよ、銀塩からデジタル、CCDからCMOS、DSLRの普及、OSの64Bit化と言ったテクノロジーの変化には着実に対応してきた製品だと言えるとは思うんだよね。
これからどうなるんだろうね。
2022年2月14日追記・アストロアーツさんによる25周年記念サイト
この記事へのコメント
次ヴァージョンが出たら、約1年でサポート終了かぁ…いいなぁ…
私は最終出荷後、5年のサポートで縛られてました。
個人向けか企業向けかで、結構考え方違うのは当たり前だと思うけど、いいなぁ…
開発環境を維持するだけでも大変だったんすよ
開発と違って、運用は地味ですし、基幹系だと要求も高そうですしね。ステラシリーズのサポート終了は買い替え促進の側面が強そうなので、もうちょっとなんとか長くしてほしいと思いますよ。ステナビの彗星の軌道要素とか古いバージョンでもインポートできるはずじゃんって思います。
初代、ステライメージは、Win32Sを入れることで、Windows3.1で動作していましたよ。
大昔のお話で恐縮ですが・・・^^;
3.1がまだ現役で動いていた時期ですものね。久しぶりにwin3.1の名前を聞きました。ステライメージが動いていたなんて想像できないです!
で、ステライメージVer2から、岡野大明神のデジタル現像が搭載されたんだ!
これは衝撃的でした。
それまでやろうとすると、自作の武藤→SBIGコンバータから、CCDOPSであれこれやらないといけなかったから。
LRGB合成が採用されたのは、Ver3からだったかもしれないけれど、さすがに記憶にないや m( _ _ )m ゴメンネ …
Ver4は当時主流だった?感度の高いブルーミングを除去するNBR法が採用されました。
ただ、この前後くらいで、天体写真の主流はデジタル一眼レフカメラに。
ステライメージじゃなくても・・という感じで、PhotoShopがぐっと出てきて、ちょっと開発期間が長くなってきたかなって思ってます。
確かにデジタル現像の実装が大きな反響を呼んだとアストロアーツさんは書かれていましたが、多少割り引いて理解した方がいいかと思っていたところ、本当にそうだったんですね。CCDOPSと言うソフトも初めて知りました。そんな苦労を解決してくれるソフトウエアなら、今でいう「神アプリ」みたいな受け入れられかただったのかもと想像しました。今はまた赤缶のおかげでCMOSに回帰しているような雰囲気もありますし、SIがどう変わっていくか楽しみです。昔の貴重なお話、ありがとうございます!
年の瀬にSIの20年+αを概観するって、オツな事!
SIってそんな昔からやってるって知りませんでした。。
Win95があったな~
ノストラダムスや2K問題もあったっっつけ。
PC、ネット色々変わった。
そして、今年も色々ありました・・・余り思い出せないですけど。
i*matさん、私もそんな昔から存在していたなんて知りませんでした! ノストラダムスも2K問題も20世紀の話だと思うと、遠い昔のように思えますが、ついこのあいだのように感じます。Photoshopも2.0だか、3.0の時代でした。モバイルギアを喜んでいじっていたのもその頃で、カメラはニコンのF3を使っていた記憶があります。ほんと、この20年あまり、色々変わりましたね。来年こそは、まともに天体写真撮りたいです!
良い記事ですね、読んでて昔が懐かしくなりました。
あの頃のステライメージは、冷却CCDカメラで撮った画像にウイーナーフィルタ等の画像復元やデジタル現像を施すのに多用してました。たしかフォトショ系だと冷却CCDのRAW画像が読めなかったですしね。
ビクセンのR200SS+GPD赤道儀を買ったのもその頃です。それまで使ってたアルテア15と桁違いのシャープさ(月・惑星でも)とAR-1と段違いの追尾精度(ノータッチでも)に唖然として「今まで何やってたんだろう」と憂鬱になったのを覚えています。
アルテア15の実力は、あぷらなーとさんのブログで知りましたが、R200SSが発売されたのが1995年ですか…。何度かアップデートはされていると思うのですが、ロングセラー品なのですね。私の筒も大事にしなきゃです。
昔の天文業界方が製品のラインアップが活発だったような印象を受けますが、それも望遠鏡も製造業の一つで、ここ20数年で世界の工場が日本から中国に移ったと言う感じでしょうか。流行り廃りが激しいわけですね!