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“パンの耳”はなぜできるのか? 比較明コンポジットしてみた

フリップミラーシステムで撮影したところ、RGB側で「パンの耳」(にゃあの造語;星が移動したためにコンポジットできなかった端の黒い部分)が大きく出てしまったことを前回報告しました。
m51.jpg
こんなやつです。M51をノータッチガイドで撮影しました。極軸はPoleMasterでバッチリ合わせているはず。しかし、1時間も撮影すると、DEC側のずれが大きくなってしまって、なんじゃこりゃ?状態になったというわけです。けむけむさん曰く「スリップしているかもよ?」と。
んで、けむけむさんとあぷらなーとさんに「位置合わせなしでコンポジットしてみたら何かが分かるかもしれないよ」とアドバイスをいただきました。そこで、比較明合成を行ってみました。まずは先のM51画像です。
比較明.jpg
盛大に星が弧になって流れているのが分かります。
比較明m44.jpg
M51の撮影に先立って何日か前にプレセペ(M44)をモノクロで撮影していたのですが、そのときはパンの耳が出ていませんでした。それがこの比較明コンポジット画像です。こちらは、弧ではなくて、猫の足跡のような形で点在しているだけで、線状になっていません。
これは天然ディザリングとでもいうのでしょうか? きちんと追尾できていると、こんな風に撮影されているということなんですかね? 全然、知らなかったです。Advanced VXを使う前は、ポラリエを使っていたので、(アバウトな極軸しかとったことがなく)パンの耳ができるのは当然だと思っていましたから。
それにしても、日によって追尾精度がこんなに違うのは不思議です。どうしてなのか? と考えているうちに、少し思い当たる点が出てきました。M51、M44の写真は、いずれも長野に遠征した際に撮影したものですが、同じ遠征先でも実は
ポイント1:北から南西が大きく開けた雑草の傾斜地。地面にはブロックを敷いて沈み込みを予防
ポイント2:南南東が開けた木製のベランダ(?)。人工的に水平な平坦。北北東から南東が死角
の二か所があります。通常、視界が開けたポイント1で撮影するのですが、南天を狙う場合はポイント2を使うことがあります。パンの耳が生じたM51は、ポイント1で撮影しました。正常に撮影できたM44は、ポイント2で撮影しています。
「場所によって追尾できてたり、できてなかったりするのかな?」と思って、1年前にポイント1で撮影した干潟星雲(M8)を比較明コンポジットしてみました。
比較明m8.jpg
やっぱり弧を描いてずれていっています。このときの露光時間は30分だったので、パンの耳の大きさはさほど気にならなかったのかもしれません。
比較明ばら.jpg
では、ほかにポイント2で撮影した画像は?と、1月に撮影したバラ星雲の画像を比較明コンポジットしました。なんと、弧を描いていません。こちらは猫の足跡というか、笑わているような感じのwの連続です。
同じポイント2でも、極軸を正確にとっていない場合はどうなのか? バンビの横顔をポラリエで撮影したコマを比較明コンポジットしてみました。
比較明ポラリエ.jpg
ポーラーメーターでアバウトに極軸をとっただけでしたので、さすがに流れています。
全部検証したわけではないのですが、ポイント1ではパンの耳ができ、ポイント2ではパンの耳ができないという仮説が浮上。つまり、
・赤道儀の設置地面が平坦か傾斜地か
・赤道儀の設置地面が柔らかいか固いか
に原因があるかもしれない、という考えです。ただし、ポイント1の地面にはブロックを敷いているので、沈み込みはなさそうなので、地面の固い柔らかいはあまり関係ないかもしれません。だとすると、平坦か傾斜地かという切り分けになりそうです。
傾斜地に赤道儀を立てる際は、もちろん水平をとっているのですが、設置に慣れてしまったため、水平どりの作業がぞんざいになってしまっている可能性があります。最初のうちは赤道儀に水平器を置いていたのですが、最近は無精してアイピース置きの平たい場所の切れ目にポーラーメーターを挿して水平どりをしてしまっています。
一方で、過去一年、パンの耳が気にならなかった理由は、
(1)前述のとおり、ノータッチガイドならパンの耳ができて当然だと思ってた
(2)以前は30分程度の露光時間だったのが、今年に入って1時間程度になっている
(3)600mmのED81SIIだけでなく、より長焦点である800mmのR200SSも使うようになってきた
といったことが挙げられるかもしれません。
しかし、水平が正確にとれていないだけで、一番上の画像のように、ズレが大きすぎる問題は本当に起こるのでしょうか? 多少水平でなくても、極軸を正確にとれば関係ないと思っていましたので……。さらに、けむけむさんにご指摘いただいたように、ネジのグリースが悪さをしている要因もあると思われます。これら一つひとつ潰していくことになりそう。
それにしても、ずれる場合に光跡が弧を描くのはすぐにイメージできるのですが、限りなく正確に追尾出来た場合、光跡が短い弧ではなくて、猫の足跡やwの形になる理由が分かりません……

この記事へのコメント

  1. >限りなく正確に追尾出来た場合、光跡が短い弧ではなくて、猫の足跡やwの形になる理由が分かりません
    正直な生活をしていないと、小人が悪さするので、こうなります。もちろん、私もこうなってます。
    理由はともかく、正しく追尾させると猫足的な感じになるようで、ビシっと一点にはなりませんね(だから、SIでコンポジットする時、位置合わせが必要なんでしょうが)
    全然理由の説明になってないけど、小人って何だよ?とか突っ込んぢゃうのは野暮ってもんです。

  2. 早速の検証、お疲れさまです。
    ノータッチガイドの場合、典型的な追尾エラーはM8の写真のようなギザギザ型です。往復運動しているのが赤道儀のピリオディックモーション(機械的な加工精度限界)で、一定方向に動いているのが極軸設定のズレですね。
    ちなみにA-VX赤道儀のウオームホイル歯数は180枚なので約8分周期で往復運動します。往復の幅(追尾精度)はおよそ±15秒程度の個体が多いようです。
    ポイント2で見られるw型は、(ビックリするほど)高精度に極軸がキマッた場合ですね(ほんと、コレはスゴい!)。ここまで極軸を合わせるのは神業です。
    で、本題のM51ですが、ピリオディックモーションとほぼ直交方向(南北)に大きく動いているので、
    極軸が大幅にズレたか、赤緯軸のクランプが緩んでいて撮影中に動いたか、のどちらかのように見受けられます。(けむけむさんのグリスヌルヌルの件も関係するでしょうね)

  3. パンの耳ですが、我が家で撮ったのと似たパンの耳ですね。
    左と底辺が黒くなる。
    自慢じゃないですが、CGEMで撮った画像にも出るのですが、下はコンクリートの上にピラーで乗っていて、極軸合わせは、毎回、イジル必要が無い位、正確に有ってます。
    なので、オヤジ的には、グリスベチャベチャ事件なのかもです。
    #追伸
    今日は、一日、庭の草取りしながら、木陰でリモートで、家のメインPCの転送状態を確認してます。(爆)

  4. けむけむさん、小人さんっていうのは、夜寝ている間にお手伝いしてくれる妖精だと思っていました。たまに夜中に事故って血だらけになっている小人さんもみたことがあります。しかし、正直な生活をしていないせいで小人さんに悪さされているとは夢想だにしていませんでした。生活改めます(汗)

  5. あぷらなーとさん、比較明コンポジットするまで、ぜんぶ同じような追尾をしているものだとばかり思っていました。これだけの違いを見ると求道心がくすぐられてしまいます。地面の平行、グリス、まともな運転に入るまで時間かかりそうですが、がむばりますっ。

  6. オヤジさんのコンクリート上のピラーでもパンの耳が出るのですか!容疑者浮上ですね。グリスをぬぐって効果があったようなら、ぜひレポートお願いします!冬は暖かい部屋で、夏は木陰でリモートって、まるでリゾートですね(笑)

  7. あのAVX赤道儀ですが、鏡筒を載せるアリミゾ部分は、外れますよね。
    CRC556等を吹き付けて、グリスを全部飛ばしても、問題無いと思うのですが(構造的に、良く解って無い所もあり)。
    カパッと外した、アリミゾ側もシュー。
    赤道儀側は、何処かに吊り下げて、下からシュー。
    これで、油で、動いてしまうことも無くなると思うのですが。
    摩擦が必要な部分に何で?。ですね。

  8. オヤジさん、偶然ですがCRC 5-56が私のデスクの上にポツンと立っていますよ。ブレーキパッド以外のところのネジにシューってやるといいかもしれませんね。極軸合わせのときのネジとかたまに固く感じる時がありますので。ただ、ノズルがどっかいっちゃったみたいですが(笑)

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