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ステラLiteシリーズは、上級者にこそ向いている?

アストロアーツさんが、パソコン天文ソフト「ステラシリーズ」のLite版を発表したよ。題して「ステラLiteシリーズ」で、発売は7月20日。お手軽価格をうたっているだけに、ターゲットは入門者なんだと思うんだけど、入門者にとって買いなのかな?

安いは正義?

天体写真を趣味で始めたいと思って、最初に困るのが製品の値段が高いことだよね。鏡筒はもちろん、赤道儀もカメラも、どれもこれも、これでもかってくらいに財布を直撃してくる。加えてどこに撮りたい星があるのかを調べたり、撮った画像を処理をしたり、CMOSカメラの場合は撮影するソフトも必要になる。ソフトウエアだけでも安く済むにこしたことはない。特に初期投資において、お手軽価格の「ステラLiteシリーズ」はありがたいかも。

Liteじゃないステラシリーズと比較をしてみると、お値段はだいたい1/3に設定されていることが分かる。こんな感じ。カッコ内は、Lite版じゃない通常版の価格。

ステラナビゲータLite 4,450円(13,200円)
ステラショットLite 11,880円(36,400円)
ステライメージLite 8,910円(27,720円)

通常版を全部そろえると7万7320円のところ、2万5240円で済んじゃうんだから、このLiteシリーズは朗報だと思うよ。でも、お値段が安いってことは、機能も制限されているってこと。制限される機能次第では、Liteシリーズで十分に間に合うこともあるし、その逆もあるわけだ。だから、そこが問題。

以下、私の経験、私の使い方でLite版を評価してみたい。

ステラナビゲータLite

星図ソフトとして定番と言ってもいい。通常版は、私が天体写真を始める前にも所有していた(過去形)ソフトウエアで、どこに見たい星があるのか、いま見ている星は何なのかを知るのに欠かせなかった。天文現象やプラネタリウム番組もついているんだけど、私はそれを使ったことがないよ。(追記:使うのをやめたのは、サポートが終了したことで、新バージョンに支払いが必要になったからです)

天体写真を始めてから、ステラナビゲータの使い方が変わったんだ。ステラナビゲータと赤道儀を接続したら、ステラナビゲータで指定した星に望遠鏡を向ける機能があることを知ったんだ。つまり、プラネタリウムソフトとして使うだけではなくて、天体導入ソフトとして使い始めたってことだよ。

ところが、ステラナビゲータLite版では、この「望遠鏡制御機能」が使えないことになっている。「望遠鏡を制御したかったら、通常版を買ってね」ってことだ。

ステラナビゲータを星図ソフトとして使うのであれば、無料のStellariumも日本語に対応しているし、そっちも使いやすいと思う。ただ、ネイティブで日本語に対応しているのがよいとか、プラネタリウムコンテンツを楽しみたいという人には、ステラナビゲータはありかもしれないな。

それから、「俺は自動導入には頼らない。星の場所さえわかれば、あとは手動で行く!」ってポリシーの人にも向いている。

ステラナビゲータの機能比較

ステラショットLite

CMOSカメラを使って撮影するためのソフトとして、私は主にAPTやZWOのASI AIR PROを使っている。でも、星図から望遠鏡制御ができる定評のあるステラショットはいつか使ってみたいと思っている。なので、このLite版にはとても期待していた。

Lite版は、自動導入補正もできるので、これはいいよ! しかも、星図と撮影機能が統合されたこのソフトウエアで望遠鏡を制御できるのだから、この機能に限定すればステラナビゲータは不要でステラショットだけで間に合う。

ところがだ。機能比較をみてみると、オートガイド制御とディザリングができないんだな。残念。「オートガイドを使いたかったら、通常版を買ってね」ってことだ。ここが入門者と中級者の境目か!(注:ここでの初級とか中級の定義は、撮影する写真のクオリティではなく、持っている機材によるってことだ)

しかし、「極軸はPolemasterとかで追い込むし、赤道儀も完璧なので、オートガイドは不要」って方針の人とか、モザイクも自分で合わせるからいらないとか、一夜一対象しかとらないとか、むしろ、「余計な機能はいらない」というそういうガチ勢向けに機能を削ぎ落とした製品だというふうにも理解できる。そういう層には、このお値段と機能はドンピシャなんじゃないだろうか。

私はオートガイドをしたいんだけれど、通常版に踏み切れない理由は、ひとえに36,400円という価格なんだ。その価値はあると思いたいんだけどね、ASI AIR PROと同じ値段なんだよね。

ステラショットの機能比較

ステライメージLite

天体写真処理をするために、私が最初に買ったのがステライメージだ。天体写真は、コンポジットなどの「下処理(プリプロセス)」と天体をはっきりを浮かび上がらせる「お化粧(ポストプロセス)」の2段階がある。無料のDeepSkyStacker(DSS)は、下処理をしっかりとこなしてくれるけれど、お化粧は薄化粧ができる程度という雰囲気だよね。

私がDSSを使い続けずにステライメージを買った理由は、薄化粧以上のお化粧ができることだった。私の印象では、通常版のステライメージはフォトショップもいらないくらい強力にお化粧ができる優秀なソフトウエアだ。ステライメージ9では、処理速度も向上したみたいだし、ステライメージで文句はない。

じゃあ、Lite版はどうなのというと、一番大きな違いは「詳細編集モード」が使えないことだ。Lite版のコンセプトは「下処理はきっちりとやるけど、お化粧は薄化粧まで」ってことだ。実物を使ってないからわからないけれど、ヒストグラムをS字カーブにしてコントラストを高めるとか、背景をニュートラルグレイにしてくれる「オートストレッチ」の機能も使えないっぽい。

DSSの代わりとして使ってフォトショップなどと併用するのであれば、Lite版もありかもしれないが、ヒストグラムの調整は入門者にも必要な基本機能だと思うので、これが使えないのは何気に痛いと思う。(追記:ステライメージのヒストグラムは、フォトショップより使いやすいと思ってる)

天体写真は初めてだけど、フォトショップの画像処理スキルが高いって人は、Lite版で十分かもしれない。

ステライメージの機能比較

まとめ

「天体写真に慣れてきたら、通常版を買ってね」という具合に、うまいこと必要な機能を削ぎ落としているのよ。まさに入門者向けだと言えるよね。

でもね、Lite版も通常版もステラシリーズが優れているのは「ユーザーができないことをソフトウエアがサポートしてくれるツール」だということ。初心者にこそ普通に使える機能があったほうがいい。それは逆に、できることが増えてくると、ソフトウエアのサポートが必要なくなるということも意味している。

だからね、考えようによっては「(普通のことができない)Lite版こそが上級者向け」なんだという気がしないわけでもないんだ。良い子のみんなは、こんな歪んだものの見方をする大人になっちゃだめだよ。

ステラLiteシリーズになんだかモヤモヤしている。
ステラLiteシリーズは、本当に入門者が買うべき商品なんだろうか? 前のエントリーは言葉を選んだつもりだったんだが、モヤモヤしているので吐ききってしまう。個人的な意見としてだが、正直、あまりおすすめできない。中途半端にしか使えないソフトウエ...

この記事へのコメント

  1. あ、おはようございま~す(例の声が脳内再生されている事に期待)。
    悪い子なので、思いっきり歪みまくったものの見方しか出来ないのですが、どうなんでしょうねぇ、これ…

    自動導入出来ないプラネソフト(有償)を使うくらいなら自動導入できる無償ソフトで良くね?と、どうしても思えちゃう。
    あと、スマートステラとの棲み分けも気になっちゃうトコロ。

    あまり情報がカンタンに入手できない時代だったらパッケージングされて媒体で提供されるソフトウェアってのはありがたい存在だったと思うけど、最近は(調べて解決する能力は要求されるけど)頑張ればなんとかなっちゃう事も多い気がするし…

    ヒトサマのビジネスモデルをどうこう言える立場でもなんでもないんだけど、私だったら、この企画
    「え?これ誰が何のために買う事を想定してるの?」
    「で、何本売るの?それ回収できるの?サポート含めたら赤字なんぢゃないの?」
    ってなツッコミを即座に入れそうな気がしちゃうワケです、歪んでるので…

    (なんか問題発言な気もするけど、ま、いっか~)

    • けだるい感じの声が脳内再生されてますよー。このシリーズ、あればもっと便利に使える高度な機能だけを落とした「普通に使えるLite版」という立ち位置なら食指も伸びるんですが、結構、入門〜普通レベルでも必要な機能まで落としちゃってるので、Lite版というよりお試し版って感じですかねぇ。このスペックならフリーミアムが相当かと思いました。

  2. なるほどー、参考になるインプレありがとうございます。ステライメージLiteはちょっと考えていたのですが、やっぱりDSSで良いかなー。

    • ステライメージLiteは、高速だろうし、セルフフラットも使えるようなのでプリプロセッシングをメインに使うのであれば、検討の余地はありますよね。無料vs8,910円のお値段勝負といったところでしょうか。

  3. アストロアーツ製品で唯一所有しているのはステラナビゲータ10。
    でもこれを買って最初に使った時にはショックだったなぁ、要らなかったと、ステラリウムで十分だったって事が分かっちゃったorz…
    ステラリウムで撮りたい対象を探すことになれた自分にとっては、ステラナビゲータのメージャーな星雲が簡易的にしか表示できない(出来るけどその操作が分からなかった)と知った時のショックと言ったら・・・パソコンに向かって”そんなバカな”って言っちゃったよ。
    なんていうかな、奥が深すぎるというのか、機能が多すぎるというのか、操作が難し過ぎちゃうんですね。
    有料ソフトなんだから機能が多すぎるのはむしろ賞賛すべきことなんだけど、人によってはそこまで要らないって思う人の方が多いような気がします。
    その意味でLite版っていう選択肢が増えたことは、これから始める方には良い事ですよね。

    フリーソフトだとマニュアルがなくて(あっても英文)操作が分からない。
    ネットには解説があるけど、使う人の解釈で操作方法がマチマチだったりするし。
    あ、これって詳細マニュアル(ビデオとか)有料なの?
    そこが解せないんですよね、アストロアーツのソフトってさ。
    気になるステライメージLiteも薄化粧までならDSSの方が良さそう。
    DSS+FlatAideProが最強!

    • Stellariumはいいですね! 私も愛用しています。ステラナビゲータは、プラネタリウムコンテンツがない代わりに望遠鏡の制御機能がついていれば買ったかもです(Stellariumでもできるみたいですが)。
      ステライメージは、絶妙なところを突いてきているので、選択肢としてはありだと思いますが、無料のDSSが価格競争力で強すぎですよね。通常版は、使いやすいし競争力のある商品だと思うので、「中途半端に9000円を払うくらいなら、最初から通常版に行っておけば?」って入門者にはアドバイスしたくなる雰囲気です。
      FlatAideProも画像が小さければ課金されなところが良心的ですね!

  4. レビュー動画とか見てると、人間には物を選ぶのに大きく2タイプあると思う。
    1つ目は、ほとんど使いもしない高機能(いわゆるフラグシップみたいなやつ)に満足&安心して買うタイプ
    2つ目は、自分の必要十分な機能と値段を吟味して買うタイプ
    決してどちらがいいとか悪いとかという意味では全くないし、誰もが両方のタイプを持っていると思う。
    経済力やその他もろもろの要素が絡み合う世界だ。
    ^^;コレ8k30pガトレルンダゼェ

    • 是空さん、私はたぶん1つ目です。高機能を使わないだけでなく、普段遣いとしても使わないみたいなタイプです(汗) 単なるコレクター? 
      ステラLiteに関しては、なんだかモヤモヤしたので、もう一個エントリーを投下しました。ちょっとはスッキリしたけれど、結局、ひとそれぞれなんですよね。きっと。

      • 本文の最後がなかなかいいオチになってるけど、ある意味正解(他が不正解というわけでなく)のような気もするんだな。
        ビギナーだって、ハイエンドな物を大切に長く使いたいという気持ちもあるしね。
        ただ、初期のとっかかりという意味では、目的の対象を絞って、ソフト&ハードの機能を絞って、低予算でとりあえず早く始めたいというのある。

        仕事だとコストと結びつくからほとんどないと思うけど、趣味の世界だからね。
        おいらも↑の『結局、ひとそれぞれ~』だと思うなぁ。

        にゃあさんの場合、”小さい”ということが重要。^^vダヨネ

        • 小さいこと重要です! 大小2つ持たないと気がすまない質らしいです。といっても特大は必要としないらしいので、大きいのと小さいの。
          で、結局、目的を持たずにあーでもない、こーでもないとどれも使いこなすことなくこれを繰り返すというのが好きみたいです(笑)

  5. 昔、OAブームが始まった頃、PC用のデーターベースソフトとかロータスやエクセルが高価で買えなかった。そんな中、〇×カルク:9800円とか格安ソフトが出て、結構買う人がいた。でも・・・今じゃ、本家以外はフリーのオフィススイートが残ってるだけなんじゃないでしょうか。
    ステラLiteシリーズの関係とは意味合いがチョット違いますけど。

    私は値段から入る人間なので、今も昔も1万を境に財布の紐の緩み具合がガラッと変わるっていう気もします。

    • 同じく、エクセルほしかったけれど、買えなかったです。ソースネクストかどこかの格安のスイートを買ったり、オープンソースの表計算を使ったりした記憶が蘇ってきました。結局、互換性の問題で使い物にならなくて、アキバでたたき売りされていた時代遅れの2000円で売られてたエクセルを買ったような気がします。いまの高校生とか若い子たちは、Goolgeのスプレッドシートとかドキュメントを使ってるみたいですね!

  6. 初めまして。天リフ経由で時々拝読させていただいています天狼星と申します。
    皆さんとは少々異なるステラシリーズの使い方をしているかもしれません。

    私が一番気になっているのは、ステラナビゲータの「彗星・小惑星はかなり暗いのまで表示できるけど、軌道要素の追加・編集はできないよ」という点です。
    小惑星はともかく、彗星なんて旬の数カ月を過ぎてしまえば初心者には興味の対象外で、新しい彗星が話題になっている時にそれがどこにあるのか表示できないなんて、「使えね~」になってしまいませんかね。

    • 天狼星さん、はじめまして! 彗星ってニュースになることもあるから、特にどこにあるか気になりますよね。去年のアトラス彗星のときもそうでした。サポートが切れていたとはいえ、ステラナビゲータに軌道要素を追加できた覚えがあります。それができないなんて、Lite版は「使えね~」ですよね。
      一方、ステラナビゲータでは軌道要素を調べて数値で入力しましたけれど、Stellariumは彗星をリストから選んで追加するだけで済みました。プラネタリウムソフトに関しては、無料のStellariumの方が使え子のような気がします。

      • にやあさん、よろしくお願いします。

        よく見ると「天体データのオンライン更新」と機能のがありますね。
        これが最新の彗星の軌道要素を含んでいるのかが不明です。
        軌道要素も簡単にネットで手に入る現代の環境を考えると、常識的には含んでいると思いたいですが…。

        もっとも、私の使い方は歴史的彗星の表示なので、フル版を買うことになりそうです。今使っているのはStellaNavigator for Windows95 ^^;

        • 天狼星さん、まさにその機能がサポート切れでオンライン更新がされなくなって、手入力するしかなかったのですよ。手入力できただけ良かったというのはありますが。
          Windows95版! 長く使ってらっしゃいますね!歴史的彗星の表示というのはやったことありませんが、天狼星さんのように、じっくり天体の動きを楽しまれるのであれば、ステラナビゲータと相性がいいのかもしれませんね。Stellariumも無料高機能なので、ぜひお試しになってみてください〜。

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