星空の写真を始めて1年そこそこのズブの素人です。きっかけは冬の夜空に上がってきたオリオン座。手持ちの一眼レフ(28mm)で撮ってみるとオリオン星雲(M42)がピンク色に写っていました。星空って綺麗だなあ。いつかあれを大きく撮って見たいなあ。それだけが理由で、天体望遠鏡を買い、天体写真を始めました。「何があればいいの?」「いくらかかるの?」と天体写真を始めたい人の参考になればとメモを残しておきます。
■広角の星空なら軽装備でOK
広角の星空を撮るだけなら、カメラと三脚とレリーズがあれば十分でした。シャッタースピードは1/20秒までに抑え、レリーズで撮影します。この程度のシャッタースピードなら星が線状に流れてもさほど気になりません。
レリーズと三脚は必須です。レリーズがないと、シャッターを押したときにカメラがぶれ、絵もぶれてしまうからです。三脚は軽いのがいいやと思っていましたが、いま思うに、三脚は多少重くても丈夫な奴がいいです。
これに加えて、ソフトフォーカスフィルターをレンズに取り付けると、明るい星が大きく写り、メリハリのある写真が撮れるようになりました。星座の形もたどりやすくなります。これで満足でした。
カメラは別として、三脚とフィルター、レリーズ含め2〜3万円あれば揃うのではないでしょうか。
まずはこれで十分です! カメラはいくらでも選択肢ありますね。レンズもありますね。怖いですね。怖いですね。
■ポータブル赤道儀に手を出す
ある程度、広い星空が撮れるようになってくると、欲がでてきて、もっと大きく撮りたいと思うようになりました。望遠レンズの登場です。私の場合、70-300mmのズームが手元にありましたので、それで撮影に挑みました。そうすると、これまであまり気にならなかった星の流れが大きく出るようになり、点ではなく線で写るようになってしまいました。
星空は常に動いているので(日周運動)、その星空の動きとカメラの動きを同期させてやれば星が止まるということを知ります。そのため、まったく知識がなかったのですが、ポータブル赤道儀「ポラリエ」(4万円くらい)を買うことに。こやつに一眼レフを乗せれば望遠レンズを使っても多少なら点で写すことができました。
ここで知ったのが「極軸」という考え方です。星空の回転とカメラ(というか赤道儀)の回転を合わせるということですから、適当に北の方に向けておけば適当にしか点になりません。真北に向けないといけません。真北といっても、地図上の「真北」とコンパスが指す「磁北」があることを知りました。「磁北じゃだめなんかー」とショックを受けましたが、さほど神経質になる必要もありませんでした。北極星が見えなくても「極軸」がとれるようにと、ポーラーメーターを入手することに。
ここまでの出費7万円くらい……
このあとテレスコ工作工房さんで「ポラリエ雲台ベース」(2万円くらい?)を買うことになるのですが、
だんだん、書くのが怖くなってきた。
■撮りたい天体が見つけられない
オリオン星雲はだいたいの位置が分かります。300mmを対象に向けて撮りましたが、300mmだとどうしても星が流れます。ブレブレ写真です。「アンドロメダ銀河(M31)なら、満月5個分の大きさがあるよー」と聞き、ひょっとして300mmなくてもでも狙えるかもチャレンジしようとしたのですが、どっこい、こちらは場所が分かりませんでした。
頭では分かってるんですよ。カシオペア座の後ろ側(?)に線をひいて、あのあたりって。でも、自由雲台の上に乗っけたカメラのファインダー(ライブビューだけど)をのぞきながら、天体を捉える(天体導入)のって、月とか一等星以上の星でもない限り無理っす。
いま考えれば、望遠鏡用のファインダーを別途買えば(2万円くらい?)、天体導入はできたのでしょうが、その考えはありませんでした。
せいぜい星座を撮ったり、月や木星の衛星を撮ったりという日々が続きました。手元に格安800mm(3万円くらい?)のレンズがあったから、それでも楽しめたんですけどね。
話は前後しますが、ポラリエと雲台ベースと300mmズームを使って東京の空で撮ったのが下の写真。ファイダーは不使用です。アンタレスから星をひとつひとつ辿って、M27に行き着きました。もっとも一眼レフで一コマずつ確認しながら辿ったのではなく、ASI1600を使った高感度ライブ画面を見ながらだから辿れたのだと思います。
■天体望遠鏡が欲しい
このあたりから、天体望遠鏡が欲しいと思い始めます。でも、しかし、いくらかかるんだい? びっくりしたのは、望遠鏡より赤道儀の方が高いということでした。初心者には十分そうなニュートン式反射望遠鏡が3万円くらいで買えるわけですが、赤道儀(と三脚)は10万円をくだりません。赤道儀を動かすバッテリーやらなんやらを入れると15万円は覚悟です。天体導入に苦労したこともあり、自動導入がいいなと思っていましたが、ビクセンの天体自動導入つきの赤道儀とか30万円超えるわけですよ。そこに望遠鏡入れたら40万円は覚悟です。
もっとも写真撮影でなくて、目で見る(眼視というらしい)のであれば、赤道儀は不要で、経緯台と呼ばれる台で十分で、価格もお安くつくのですが、私の場合はM31やM42といった星雲や星団を写真に撮りたかったので、経緯台の選択肢はありませんでした。
で選んだのが、ビクセンED81SII(焦点距離625mm,F7.7)という屈折式望遠鏡(9万円くらい?)と天体自動導入ができるセレストロンAdvanced VX(AVX)という赤道儀(9万円くらい?)でした。そこにバッテリーやら極軸望遠鏡やらアクセサリやら消費税をつけて20万円超。ニュートン式ならもっと安いのがあったのですが、光軸調整とかいう難しそうな作業が必要なようです。これで天体写真が面倒になったら元も子もないのと取り回しのしやすさの観点で、屈折式にしました。
ファインダーやアイピースもついてきました。苦労した天体導入も自動でできるようになり、晴れた夜空を楽しむことができるようになりました。だいたいこのセットと一眼レフとで、星雲や星団は撮れるのです。個人的には十分です。30秒1枚もので淡い写りでしたが、初めて子持ち銀河(M51)やボーデの銀河(M81,M82)が写ったときは嬉しかったですねぇ。
ポータブル赤道儀関連も含めて、ここまでに30万円くらい突っ込んでます(諸先輩からすると可愛い額でしょうが……)。だんだん辛くなってきました…
天体写真を始めたいという方は、20万円前後の予算は見ておきましょう。と、個人的な経験としては言えます。
これで満足できればですよ。満足できれば……
■ポチリヌス菌ってなんだよ
天体望遠鏡を買ってから、間もなく私を襲ったのは天体愛好家界隈で伝染する「ポチリヌス菌」という病原菌でした。「ボツリヌス菌」かと思ったら違った。梅雨時の感染症で、星空を撮りに行けないストレスから、ネットでポチッとブツを買ってしまうという恐ろしい病気。
何度かED81SIIとAVXで撮影しているうちに、極軸の調整は絶対だと感じるようになりました。ちょっとでもずれてると星が流れてしまいます。AVXの極軸望遠鏡は、暗視野照明がついていないので、懐中電灯とかで照らしながら極軸を調整しないといけません。このストレスがとてつもなく大きい。頑張ってぴったり合わせたつもりなのに、写真に撮ったらブレてるとか、泣けてきます。
そこで、Polemasterをゲット。一種の電子カメラなわけで、パソコンと赤道儀をつないで、ドンピシャに合わせてくれるアクセサリ。4万円くらい? 高いんですが、高いんですが、腰は痛くならないし、汗はかかないし、1〜2分なら星は流れない(ように見える)し、買った甲斐があったというものです。ここまでで35万円。
あとは、カメラでした…天体愛好家のなかでは「冷却カメラ」が憧れの的なんだそう。50〜100万円くらいするんですって。フィルターワークやらナローバンドがどうしたとか、初心者には使えなさそうです。しかし、そこにZWOのASI1600-MCーCOOLというカメラを知ることになりました。
ちょうどね、焦点距離がもう少し欲しいと思っていたところだったんです。625mmにAPS-Cだと938mm相当なんですが、こやつはフォーサーズなので、1250mmまでのびる。難しそうなカメラだったけど、カラーなのでフィルターとか難しいのはなさそうだし、冷却だからノイズが出にくいとか、高感度で撮れるとか、ボディは軽いとか。「面白そうじゃないの?」と酔っぱらっているときにポチッと。13万円くらい?で今に至る。。。
およそ一年で突っ込んだ経費は50万円也。ちーん。
ほかにもね、きっと思い出せないだけで出費してるはずっすよ。思い出さない、思い出さない。。。
この記事へのコメント
比較的順調に進んでおられるようで (^o^;
予言します。次はオートガイダーだと思います (^o^)
けむけむさん、心を見透かされたようで怖いです(笑) rev1?のasi1600なので、セルフガイドができないかと画策中です。ちょっとやってみましたが、難航の予感です……
ASI1600MC-Coolを使って、撮影中にオートガイドもさせちゃうんですか?そんな事できるんですか?
かなーり難しそうですが頑張ってください。
オートガイドは以前、NexGuideですごく苦労しましたが、M-Genに変えたら、それまでの苦労は何だったの?って感じになっちゃいました。
ちょっと調べました。1600MCではなく、290MCについてですが、
Q:As an ST4 guide port is built in, can the cooled version of these cameras “self guide” if used for long exposures?
ZWOのSAM曰く
A:they are not self guide camera the ST4 port allow you to control it through your PC
ということで早くも撃沈です(T_T)M-GENは上級者向けとアナウンスされているので、私にはまだ早いのではないかと不安に。レデューサーに活路を見出すかと考えたりもしますが……ちまちま買い揃えるより、いいもの買ったほうが、結果的に安いのかもしれませんね。
M-GENが上級者向きとすれば、カメラのコントロールでディザリング出来るからではないかと思います。
私はそんな難しそうな技は使ってないです (^o^)
(接続できるカメラも限られてましたし)
初心者用と言われるNexGuideに比べたら、M-GENははるかに簡単です。
最大の理由は感度の違いで、M-GENだとなーも考えずにスグに星が見えますが、NexGuideはガイドに使える星を探して大騒ぎです。
で、ガイド精度も全然違います。NexGuideは頑張っても卵型になっちゃうことが多かったです。
けむけむさん、ありがとうございます。ガイド鏡を持っていないので10万円コースになりそうです(^^; 9月下旬に入荷ということですから、それまでぐっと我慢して腕を上げることにします!