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望遠鏡のねじと穴の話

天体写真をはじめたとき、望遠鏡のM42とかM57とかさっぱり分からなかった。メシエ天体の話じゃないよ。ねじの話だよ。最近、3Dプリンタ遊びを始めたことで、その「ねじ」と「あな」の問題にふたたび悩まされている。

ねじのMとP

最初わからなかったのはBORGパーツのM42とかM57という「M」が何を意味するかってこと。Mって、長さ単位のメートルのMだったんだね。M42は42mm径、M57は57mm径っていうふうに、ねじ径の大きさをMで示している。これに気づくのには、あまり時間がかからなかった。

次に分からなかったのはピッチだ。ねじって径が合ってれば、なんでもはまると思っていたけれど、ねじ山の間隔がものによって違う。ねじ山の間隔のことをピッチと呼んでいて、表記にはPを使う。42mm径のねじでピッチが0.75mmなら、M42P0.75と書く。M42にはP1.0もあって、ややこしい。スペックをいい加減に見ていると、はまらないわけだ。BORGパーツはこんな表記ばっかりで、なんのことだか、さっぱり分からなかった。

下の写真はピッチゲージ。ねじのピッチを測るのに使うんだ。径を測るにはノギスがあると便利。プリンタ遊びをするための必携ツールだ。

どれもぴったりサイズじゃない話

さらに、ねじの規格は、メートルだけじゃなくて、インチもあって、頭のなかが「???」になる。カメラねじやアイピースは「インチ」。それ以外は「メートル」って感じかしら。

さらに、ねじじゃないんだけど「アメリカンサイズ」という規格の呼ばれ方がある。アイピース型パーツの差し込み径は、「アメリカンサイズ」とも呼ばれるみたいなんだ。アメリカンサイズというのは、特別な規格ではなくて、インチ規格のことらしい。そもそも私は「アメリカンサイズ」っていうのは、アメリカ人が喜ぶバカでかいサイズのことかと思ってたんだぞ。ややこしいったら、ありゃしない。

で、アイピース型パーツは、商品スペック的に「31.7mm」の値で慣れ親しんでるんだけど、31.7mmは、1.25インチをメートル換算した長さに相当する。しかし、小数点第二位まで入れると実際は31.75mmになるので、0.05mmの差が出てくる。ぴったりじゃないんだな。

Mねじでも、M42は42mmぴったりかというと、そうではなくて、「公差」ってのがある。許容される寸法の範囲のことらしい。「誤差」は間違いだけど、「公差」は許容、っていうニュアンスかしらん? 何がいいたいって、ねじでもアイピースでも、なんでもかんでもピッタリサイズじゃないってことだ。

たとえば、ほかにもアイピース型のカメラでいうと、ZWOのASI120MM-miniの径は、31.75mmちょうどなんだが、QHY5III178M/Cは、31.6mmなんだ。その差は0.15mmもある。

アイピース型のカメラをホルダーやスリーブに差し込めるようにするには、ある程度の遊びが必要なので、私が3Dプリンタで印刷する場合、余裕をもたせて32mmで穴を開けている。そうすると、31.75mmのASI120MM-miniが摩擦を感じながら「するっ」と入るのに対して、31.6mmのQHY5III178M/Cは「ぶかぶか」だ。

たった0.15mmの差で「するっ」か「ぶかぶか」かが決まる。恐ろしい世界だ。

無視できない底面のバリ

1/10mmとか1/100mmの世界で面倒くさいのが、印刷底面にできるバリ。36EDのバーティノフマスクを作ったときは、このバリが目に見えていたので除去したんだけど、ホルダー類を作っているときは目に見えないので無視してた。

ところがこのバリのありなしで、アイピース型のカメラの滑り込み具合が違う。この類のバリは、指の腹で触ったら分かるくらいにしか突起してない。バリがあると、ぴったりサイズのZWOのアイピースが差し込めないんだ。でも、このバリをきちんと取ることで、上に書いたようにするっと入ってくれる。「するっ」と「入らない」の差がバリのありなしで決まるってわけだな。

なので、精密なプリントをしているときは、このバリは除去しなければならないということに気づいた。バリ取りに関しては、いろいろやってみたんだが、100円ライターでバリを焼いて蒸発させるのが一番いいみたいだ。これ、必須。プラットフォームの接着面にできたバリを燃焼させて蒸発させるの。燃やしたあとに、指の腹で触るとなくなっているのが分かるんだよ。ただ、熱し続けると、本体が溶けちゃうので、火を当てるのは一瞬だけ。

異径ねじアダプタが成功しないのはバリのせい?

で、ねじの話に戻る。3Dプリントしたいのは、ホルダーとかフードとかねじを持たないパーツもあるんだけど、異径ねじのアダプタが作れれば応用範囲が非常に広がる。これまでねじがうまくはまらない原因は、フィラメントの収縮だと思ってた。それも大きい要因としてあるとは思う。

でも、プラットフォームにつけない側がうまくいく場合が多くて、プラットフォーム側がいつもうまくいかないのは、このバリの要因も大きいんじゃないかと疑いはじめた。

ABSよりPLAの方が熱収縮性は低いみたいなので、PLAでプリントしてみよう。同じPLAでもPLA Plusはさらに熱収縮性が小さいみたいだから、PLA Plusを使ってみたいと思うよ。加えて、プラットフォームのヒーティングベッドは取説にあるように70度に加熱しておこうと思う。

プリント結果が、公差の範囲に収まればいいんだよね。M42だと公差は0.3mmくらいだから、それに収まるようにすれば、どうってことないな ヽ(  ̄д ̄;)ノ エー!?

下穴のサイズ

ついでに、下穴の話もメモとして書いておく。ねじをプリントするよりも下穴をプリントして、タップでねじを切るほうが固定感がしっかりしてる。強度はまだ良くわからないけれど、小物の類なら問題ないと思う。しっかりはまってくれている。

ねじ切りタップというのはこういうやつ。金属じゃなくてプラスチックが相手なので、高級商品じゃなくていいと思う。

下穴というのは、ねじの螺旋がない、ねじ切りをする前の穴のこと。下穴を開けておくことで、タップでねじ切りをするときに、カンタンにねじ切りができる。下穴のサイズも規格で決まっているらしく、よく使うねじ径の下穴は次のとおりなのだ。

メートル並目ねじ

  • M4 x 0.7 下穴サイズは 3.3mm (ファインダーとか小さめの機材を留める)
  • M6 x 1.0 下穴サイズは 5.0mm(鏡筒とか大きめの機材を留める)

ユニファイ並目ねじ

  • 1/4ねじ 下穴サイズは 5.1mm(いわゆるカメラねじ。アリガタやアルカ接続に)
  • 3/8ねじ 下穴サイズは 8mm(三脚との接続。強度が必要なので使わないかも)

こちらを参照した。

https://www.ymzcorp.co.jp/ym11/drillhole.html

この記事へのコメント

  1. いろいろやっているみたいっすね。
    自分の場合、望遠鏡などのパーツ関連は100%ABSを使うので参考にはならないと思いますが、大径のネジ山の修正はそのピッチゲージでバリを取っています。

    タップでネジを切る場合ですが、最近は下穴ではなくネジそのものを出力しています。
    そしてタップで修正するのがベストだと思うようになりました。
    理由は、下穴だけだと樹脂が柔らかいために真っすぐにネジを切るのが難しいと感じるからです。
    軽い力でネジ切りが出来るがために斜めにも簡単にネジが切れる。
    斜めったなッと思って方向を修正すると逆の方向に斜めったりするし、最終的にはなんとなくOKにはなるんですが、それならネジを出力した方が楽に修正できるんじゃない?とやってみたら、その方が良かったんですよ。
    ネジ山が作ってあるところにタップを入れ、力を掛けずに切っていくとほぼ100%真っすぐネジ山が出来ます。
    今のところ失敗無し。
    タップを使うのが下手なのかもしれないですけど、自分にはこの方法があっているみたいです。

    いろいろやって自分に合う方法が見つかるといいですね。

    • まだまだ試行錯誤ですよー。いわゆるネジ穴は、どちらの方法でも一応は、固定できるようにはなったのでが、下穴がいいのか、ネジ穴がいいのか、まだ暫定結論です。フィラメントによっても違うかもしれないですし、ヘリサートやエンザードも試してないですので。次の課題は、異径ねじのアダプタを成功させることかですかねぇ。これまで5個くらい試作しましたが、どれも失敗してます(><)

      • カメラde遊ingさんの「タップで修正する」方法と「ライターで焼く」方法の折衷で、異径ねじのアダプタできました。ありがとうございます! かなり邪悪なやり方で精度の問題はありますが……ご報告まで。

        • いい方法が見つかったようで・・・何よりです👍

  2. バリはライターで焼く、と。なるほど、参考になります。あまり精密なのは作らないので、バリはいつもヤスリで削っています。先日Cマウントの1″ネジを作ったときは、いらないCマウントカメラに無理やり何度かねじ込んで修正しました。ピッチゲージ買っといたほうがいいかなぁ。。

    • ねこめしさん、ライターはYoutubeで見たまねっこです。手元にヤスリがないので、炙っちゃいました。精度の問題はあるのですが、ねじ周りの修正にライターを使った方法を少し探求してみます。

  3. インチってあの分数表示がいや!
    スパナで締めるとき、ピンポイントでサイズが分かっていれば問題ないけど、見た目でこのサイズかな?と思って一つ違ったとき、一瞬「えっ?」となる。
    例えばミリネジなら10㎜だと思ったら少しネジ側が大きければ11㎜、小さければ9㎜とすぐにわかる。
    インチだと3/8だと思ったらネジ側が大きかったとき1/4で、ぎゃくに小さければ1/2と分母がいちいち変わってしまう。(この辺は見た目で間違わないけどね。あくまで例。)
    インチネジは分母を16に統一してほしいとかねがね思ってる。
    分母16以上のネジはどうするって?そんなの知らん。^^ツカッタコトナイシ

    • 分数が苦手です(笑)数字が大きければ、ネジも大きいって分かりやすいですよね。分母を16に統一したら、約分する人たちが出てきて、さらに分からなくなってしまいそうで怖いです!

  4. M42P1はカメラのねじ込みマウント(例:ペンタックスのSマウントや、東欧プラクチカのカメラなどでが有名)の規格なのですよね。ネジ切るだけでいいのでかなり普及しました。
    そのため、互換アダプタやマクロ用ヘリコイドなどでよくある規格です。既にあるので、コストの関係でそれをまた使うという。
    いい加減、アメリカはインチ、マイルを消滅させてくれんかなと思います。
    最大消費国なのでここが変わらないと統一無理だろと(あそこは良くも悪くも民意主導なので、いつのまにかISO統一化の流れが消えてしまいました)。

    • 普及には、そういう背景があったのですか。力を入れても壊れないので扱いやすいですよね。ヘリコイドの安いものがあれば、ぜひ手に入れたいです。また、探してみようっと。

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