東京の都区内に住んでいると、空は夜でも常に明るくて、天体写真を撮るような環境じゃない。しかし、それでも赤道儀を設置して星を追尾して、光害カットフィルターを使えば、なんとか写真は撮れる。眼視でも、望遠鏡をきちんと向ければ、田舎ほどではないにしろ、アイピース越しに輝いた星々を観察できる。
でも、しかし、小学校で習うような星座が散らばった星空を観察するのはほぼ無理ゲーだと思う。1等星は肉眼でかろうじて見える程度で、2等星は観察できない。同じ1等星でも、アンタレスはその色を肉眼で観察できないし、存在も分からない。都心で星座を観察するのは難しい。星座といっても、夏冬の大三角とオリオン座を確認するのがせいぜいなんだ。
目がいい人にはひょっとして見えているのかもしれないけれど、高校生のうち約70%が近視という状況だと、見えないに等しいんだと思う。私も近視なので、少なくとも2等星は望遠鏡などを使わないと見えないという経験をしている。
そういうわけなので、小学校で学ぶ星座は、ほぼ経験から離れた知識として学ぶことになる。東京都心の子どもたちが夏休みの自由研究のテーマに星座観察を選ぶことってあるんだろうか?
前置きが長くなってしまったけれど、とにもかくにも、私のなかには「東京都心で星座を観察する術はないものだろうか」という問題意識が常にある。始めに書いたように、光学機器を使わない肉眼では無理なのだろうけれど、広角のレンズを使ったカメラなら星座を捉えることはできる。しかし、その経験は、「写真撮影」になってしまうので、できれば自分が星座を「見ている」ような経験にしてみたい。これが私の夏休みの自由研究のテーマというわけ(まぁ、休みじゃないが……)。
そんな環境を整えられそうなのが、T-Studioさんが提案されている高感度防犯カメラを使った星空鑑賞方法で、このブログでも何度か紹介してきた。防犯カメラと言うと、あんまりキャッチーじゃないので、何かほかの言い方はないものだろうかね。
システムの構成は比較的シンプル。私の場合は(1)防犯カメラ(2)Cマウントレンズ(3)ビデオキャプチャボックス(4)経緯台(5)カメラ三脚の5点。あとはカメラに電源を供給するモバイルバッテリ(5V)や任意でフレキシブル・ハンドルくらい。これらのセットは、小型のケースに収まるし、経緯台と三脚も大きめのスリングバッグに収納できる。構成は少し異なるけれど、ケースに入れたイメージはこんな感じ。
三脚込みで全重量は2.5kg程度なので、ちょっと空が晴れていたら、視界が開けた公園にお出かけしてみようと言う気になる。昨晩は、23区内の公園(SQM17.83、Bortle class 8-9)に出向いて、このシステムを設置してみた。
全天を観察してみたかったので、使ったCマウントレンズは、2.8-12mm(F1.6)、8-50mm(F1.4)のズーム(実際にはバリフォーカル)2本。センサーはIMX385なので、35mm換算すると2本でだいたい14mm〜250mmをカバーできる。このシステムは軽量・安価であるだけでなく、何よりも画像処理を行うパソコンが不要で、リアルタイムの星空が楽しめることがメリットだと思う。
肝心の天気の方は、夕方までは晴れていたのに、夜になったら曇り始めるといういつものお約束。薄曇りに加えて月が明るかったので、ほぼ星が見えなかった。
ビデオから切り出して、トリミングと強調をしたのが下の写真。実際にはもう少し見やすいんだが、わかりにくいな。真ん中に写っているのがこと座のベガで、その右下にSheliakとSulafatの3等星が確認できる。この2つの恒星の間にM57があるが、この焦点距離では観察できない。左上にはりゅう座の2等星Eltaninが見える。ノイズでなければこと座のζ星(4等星)が写っているようにも見えるが、この日の条件だと4等星は厳しい感じ。
しかし、何よりも驚いたのは、1時間ばかりの間に、2つほど流星と思われる光跡が観察できたこと。流れる速さは人工衛星や飛行機ではなかったし、虫のように大きくもなかった。以前、ベランダで流星が撮影できたので、東京都心でも見えるは見えるのだと思う(人工衛星はFIA Radar 2というアメリカ国家偵察局=NROのレーダー衛星がはくちょう座を縦断するのが確認できた)。
今回はちょっと天気が悪かったので、晴れたら出直したい。同じIMX385でもASI385MCとSharpCapの組み合わせで15秒も露光をかければ、かなりまともに星座が写ることは確認しているんだが、いまのところ「撮る」のではなくて「見る」ことにこだわっている(せろおさんがおっしゃるようにα7Sでも実現できそうだけどね)。
いずれは、前回も試してみた観察の延長戦として、このシステムと眼視望遠鏡に統合した環境を発展させて、気軽に眼視で星空を楽しむ環境構築を目指してみたい。
この記事へのコメント
コンパクトに仕上がりましたね。
晴れていれば広角側でメジャーな星雲、星団は確認できると思いますよ。
125mm☓20倍の対空双眼比で2~3等級暗い星が見えます。
(当地は南天は晴天で3等星が限界、北天は5等星という環境です。)
架台が軽いとフットワークがまったく違ってくることを実感しました。別の日にベランダで試したときは4等星がぎりぎりでした。星雲・星団が見えてくればいいのですが、T-Studioさんの地域で3等星が限界となると、期待薄でしょうか。何はともあれ、晴れた日に試してみます。きょうは、微妙かなぁ。
にゃあさん
3等星限界は肉眼ですよ。(霧が多くめったにありませんが。。)
そのくらい肉眼で見える空だと広角側で6~7、望遠側で12程度は見えていたと思います。
画像処理でゲインを6程度にして明るさのパラメーターは抑えめに、霧除去、ダイナミックレンジを背景になどのコントラストを高くする機能を使うと見やすくなりますよ。
そうでしたか! 早とちりでした。パラメータはいろいろあるので、ベストなセッティングを模索するのに時間がかかりそうです。以前教えていただいたパラメータも含めて試行錯誤してみます。
授業中に居眠りしていたら、いきなり名前呼ばれた気分(笑)
「東京に宙はないといふ」
大学は東京近郊(東京ではない)に行きましたが、
星と山が見られない環境に耐えかねて、山国にUターンしました
といってもその頃は星から離れていましたが・・・
今の住処は駅に近いので夜空が明るいですが、
それでもうっすら天の川は見えます
それでも晴れ間と街灯のない場所を求めて1時間以上かけて山まで行きます
それにしても全然晴れません
いろいろと機材テストが溜まっています
AM5、FMA230、200mm/f2レンズ・・・
そしてやっぱり今年もペルセウス座流星群は拝めそうもありません
数少ないα7sの出番が・・・
先生、星が見たいです・・・
寝ていたので、当ててしまいました(笑) 突然名前が出てくると「えっ?」てなりますよね。すみません。
AM5届きましたか! これは気になる赤道儀です。まだ必要はないのですが、次買うとしたらどの赤道儀にしようかとたまに妄想してしまいます。
先日、久しぶりにカメラ・レンズで天の川を撮りましたが、写りを気にしだすと、レンズが欲しくなり、価格を見てみると、望遠鏡以上に高価であることに気づき、そっちに向かうと身動きがとれなくなりそうな予感がしながらも、ネットをさまよってしまうという悪循環。ソニーから卒業したいとも思い始め…
先生、お金がほしいです…
お薦めはNIKON ZボディにZ 14-24mm/2.8S or 20mm/1.8Sです!
開放から隅々まで星がほぼ点像に写りますよ!
お値段はまぁ・・・
最初から一番良い物を買うのが一番お金がかかりません
わかっているけど、いつも遠回り・・・
まぁ機材テストが趣味なのでイイのですが(イイのか?)
>最初から一番良い物を買うのが一番お金がかかりません
おっしゃるとおりだと思うのですが、14-24mmは、恐ろしいお値段ですね。これも見ているうちにリーズナブルに見えてくるところがまた恐ろしいという…。
うちのあたりはにゃあさんの所よりも条件はよさそうだ。
天候に恵まれればうちからでもM45は比較的簡単に見ることができるし、さそり座も頭から尻尾まで低空の視界を邪魔されなければ見えるからね。
まぁ、街頭の光と南側の川崎駅周辺の光をうまくかわすことが肝だな。
同じ都区内でも条件は色々って感じだね。
今回の観望システム、なかなかカッコいいね。^^b
うちは光害マップだとSQM17.94です。是空さんところとそんなに変わらないと思うのですがLEDの街灯がベランダの高さでビカビカに光っているのはダメージ大きいですね。そのせいかアンタレスが肉眼で見つけられないのでM45も見えないです。同じ23区でも世田谷のはずれくらいまで行くと、空が広いですし、オリオン座が明るいなって思うことがあります。確かに都区内でも条件は色々ですね。
私の場合視力の衰えでしょうか、どれだけ目を凝らしても薄雲が棚引いてる気がする時があって、簡単に視力を拡張するデバイスが欲しいと思う事があります。いよいよ軍用暗視スコープの出番なんでしょうか。
PC要らずで星座を観察・・・で思い出しましたが、
「実物星座早見盤」http://yumarin7.sakura.ne.jp/vixen/kr332.html
っていうのがありましたネ・・・
一寸、トンデモ光学っぽい?!
実物星座早見盤のコンセプトにすごく共感します! 「星空の実像を目の前に作り出して手元に置き、それを両眼で見つつその光景を時にはカメラに収める」というのは、電視寄りの眼視のコンセプトそのままですし、「任意の星の像を指で触る」というのもこれまでにない体験ですね。「星をさわる道具」ってところが素敵すぎます。
世の中、すべてデジタル化してしまって、自分の体・五感で体験することが減ってきているような気がするんですよね。あたまでっかちな世の中がつまらないと思うことが時々ありますですよ。