4コマ漫画の4コマ目を描かずに終わってしまったような前回。今回は、作例を通じて、Hα以降の光を通さない自作フィルターとSVBONYのUV/IR Cutフィルター(31.7mm)の比較をして、天体改造カメラが普段遣いできるようになるのかを見ていくことにするよ。以下、撮影機はクリア改造EOS Kiss X7i、 レンズはタムキューさんことTAMRON SP 90mm F2.8 Di MACRO(Model 272)。
フィルターの特性の違い
まずは、おさらいとしてフィルターの特性をみておくね。SVBONYのUV/IR Cutフィルターはこんなだ。SVBONYのフィルターは、Hα(656.3nm)をほぼフルで通して、700nmあたりの波長も80%ほど透過させる。そして、725nmあたりまでの波長を拾っている。UV側は400nmのわずか手前から拾うようになっている。
対して、自作フィルターは650nmあたりの波長は40%ほどしか通さずに、拾って700nmあたりまでといったところ。UV側は375nmあたりから拾っているようで、赤い光に厳しく、青い光には寛容といったところ。
SVBONYのフィルターはほぼフルでHαを通すのに対して、自作フィルターはHαをほとんど通さないというのがこのグラフの比較からわかるよね。SVBONYのフィルターはたしかに、赤外線をカットするけれど、星雲撮影用にも使えるフィルターだということ。そして、自作フィルターは、地上戦用のフィルターに近い特性を持っているということがわかる。
作例による比較
じゃあ、SVBONYと自作のフィルターを比較していくよ。
作例:お花
まずは、お花の写真から。
1枚目はSVBONYのUV/IR Cutフィルター(1/500,F5 ISO400以下同じ)、2枚目は自作フィルター(1/200,F3.5)で撮影した。被写界深度が違うのだけれど、見てほしいのは色合いの違い。SVBONYがしっかりとしたオレンジ色で写っているのに対して、自作フィルターはレモン色のように写っているね。フィルターの特性どおり、SVBONYは赤みが強く出て、自作は青みがかかる。ホワイトバランスはSVBONYのフィルターで合わせているよ(太陽光にしておけばよかったな)。
作例:草
次は草だよ。植え込みの植物なので、きっと名前はあるんだろうけど。よくわからない。
1枚目がSVBONY(1/640, F6.3)、2枚目がノーフィルター(1/250,FはEXIFに0とあった)、3枚目が自作フィルター(1/500,F5)。SVBONYは緑がやや薄く、自作に比べて光をたくさん反射して眩しそうに写っている。これはたぶん、取り込む光の量が自作より多いからだと思うんだ。2枚目のノーフィルターは、センサーが真っ裸なので、紫外線も赤外線も感じられるだけ、ありったけの光を取り込んでいるので、サチってしまっているんだと思う。自作フィルターは、特に赤外の光の反射が抑えられて、おとなしい雰囲気。
作例:電柱
最後は電柱。SVBONYで逆光気味に撮影すると、レンズとフィルターの距離関係からか、ゴーストというのかフレアみたいな像が出てくるというのは分かっていたんだけれど、今回ははっきりと再現しなかった。しかし、実際に明るい空に向けて写真を撮ってみると、SVBONYと自作では大きな違いがあることが分かったよ。
1枚目がSVBONY(1/500, F5.6)、2枚目が自作(1/500, F5.6)。SVBONYの方は、おそらく光の取り込み量が違うので、やや明るく写っているけれど、コントラストが低いというか、眠たい写真になってるよね。対して、自作の方は、フィルターの影響をほとんど受けていないように見え、コントラストもはっきりしている。
まとめ
もともと、電柱の作例に見られるようなフレア的な反射が嫌だったので、フィルターを自作することにしたんだけれど、今回の作例を見る限り、自作フィルターを装着すれば、天体改造機でも地上戦で十分に使えそうだということが分かったよ。
つまり、クリア改造(フルスペクトル改造も?)された天体改造カメラは、フィルターを使い分けることによって、HKIR改造相当にできたり、無改造相当にできたりするわけだ。天体改造って、後戻りできないような覚悟めいたものが頭をかすめるけれど、そんな心配はもういらないかもしれないね。
問題はフィルターの作りで、何度も取り外ししているうちに、フィルターが枠からポロって取れちゃった。きっちりと接着しないといけないな。それから、タムキューさんの90mmだとケラレは見られなかったけれど、これが28mm相当の広角付近でケラレが出ると、日常使いというわけにはいかないかもしれない。試しに広角ズームも手に入れてみるかな。適当ないいレンズはないかしら?
もっとも、私の場合は、風景写真を撮るのは、よほどのことがない限りスマホを使うので、無改造のα6400も含め、レンズ交換式カメラ(ILC:Interchangeable lens Cameras)の稼働が落ちているという悲しい現実はあるな。
いずれにしても、8月から続いた長いじっけんはこれにておしまい!
この記事へのコメント
レンズ交換式カメラを使わなくなってきている・・・同感です。ナンか悲しい・・・彼らもいつか歴史の教科書の中の機械になっちゃうんでしょうか。
今まで、天体改造って、一度踏み越えると二度とカタギに戻れないっていうカンジで、エモノのカメラたちを前に、凄く悩んだんです。ジッと見つめると、レンズ視線をそらされるカンジ。でもフィルター交換できるなら、罪悪感も少ないですね!
これで6Dの改造機を買ってもいいかなぁという気がしてきましたよ。冗談ですが(笑) しかし、レンズ交換式カメラが歴史のなかの機械になっちゃうとしたら……
【レンズ交換式カメラ】 = 20世紀からデジタル時代黎明期の21世紀初頭にかけて普及した、レンズが交換できるタイプのカメラ。レンズが捉えた光を確認するためにファインダーと呼ばれる機構があり、後期にはファインダーに鏡を使わないミラーレスというタイプも存在した。データの記録には、メモリーカードという取り外し可能な記録メディアが使われた。本体とレンズを合わせた重量は500gをくだらず、重い機種ほど珍重された時期もあった。
って感じで説明されちゃうのでしょうか…
数十年後のわたくしたちは一体どういうデヴァイスに囲まれて生活を送っているのでしょうか・・・
オーイ、ソッチノ世界は、暖かく、満ち足りて平和なのカーイ?
そして、夜空にはまだ、ベテルギウスが輝いているのカーイ?
あぁ、どんなにデバイスが進化しても、幸せな未来になっているといいですね。
この地球が超新星爆発の餌食にならないことも心から祈っております (* ̄- ̄)人